Diddy - Dirty Money 『Last Train To Paris』
2011-02-23
流行りのエレクトロ・ブームを彼なりに吸収し、顔の広さを活かした様々な客演アーティストを迎えてHip-Hop/R&Bで体現させてみせた、という趣のアルバム。これが程よくキャッチーであり、程よく遊び心のある実験的要素を含んでいて面白い。なんて言うんだろ、「あ~、これは売りに走ったなぁ」と言うほど嫌味ったらしい曲(4つ打ちとかあからさまにPopな曲)は無く、どの曲も「あぁ耳馴染みの良い曲だなぁ」みたいな。だけれども全体を通しては少しどんよりと地味で冷たい雰囲気が漂う。
ただし、聞き手がそれぞれお気に入りの曲を見つけるのは容易ではないかと。自分の場合は今一番ハマっているのは、さながらUsher「Hot Tottie」的な、Polow Da DonプロデュースでTrey Songz客演によるネットリエロHip-Hopな「Your Love」。繰返される低音と念仏の様なHook、更には曲終わりのトークボックスまで全てが病み付き。Hip-Hop系だと、Danjaプロデュースの低音ドスドスなエレクトロトラックが"鬼"格好良い「Hello Good Morning (feat. T.I.)」は絶対聞けば体が疼くし、Swizz Beatzプロデュース&客演の「Ass On The Floor」もビートが個性的。(Major Lazerの「Pon De Floor」使いだと思いきや、特にクレジットは無い模様…?) R&B系だと、Chris Brown客演の「Yesterday」やUsher客演の「Looking For Love」は涼しげで聞いていて心地良い。変わり種だと、Lil WayneやJustin Timberlakeらが客演の「Shades」や、同じくLil Wayne客演の「Strobe Lights」は、何とも言及のし難い不思議なトラックの魅力と中毒性のある恐ろしい曲だ。キャッチーさでいくと、現在ヒット中のSkylar Grey客演の「Coming Home」、Diddy名義での前作アルバムからの続編的扱いとなる「Last Night Part 2」辺りが聞きどころ。
その他にもジャジーな曲があったり、90年代的シンプルな音使いの曲があったり、Diddyが歌ってみたりと、色んな人を招いて色んなやりたい事やってます。が、これが本当に不思議な事にとっ散らかった印象は無く、アルバムとしては前述したように一貫した"冷やっこい"雰囲気がきちんと漂ってるんです。これが大きなポイント。んで、その雰囲気を最後の「Coming Home」で解き放ち、ほっこりして終了。ってな印象を個人的には受けました。(「Coming Home」が最終曲に位置するのは、US DX盤と日本盤です。) お洒落です。
発売されるまでに幾度と無く発売延期があり、結局どういう曲がやりたいの?とか思いながらぜ~んぜん期待していなかったのに、蓋を開けてみればアルバムは傑作でした。どういう曲がやりたいと言うよりは、色んな曲がやりたかっただけなのね、っていう。
「やはりDiddyは侮れない」
この一言に尽きる。この人の流行りに対する嗅覚の鋭さとセンスは認めざるをえないね。
…でもやっぱりキャラは好きになれないけど(笑)
そしてこのアルバム、なんと既に収録曲から8曲分ものVideoが作られています。さすが成金趣味!
(更にアルバム未収録曲と3つのRemixを含むと12個!)
全部貼り付けましたのでどうぞ。